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2-4 矯正治療は何歳までできるのか?

- 矯正治療は何歳までできるのか? 年配の方でも効果的? 矯正する意味は? -

歯列矯正といえば、以前は子供が中心でした。しかし、いまでは成人の患者さんが増え、子供と変わらないほど相談に来られるようになりました。成人と言っても、ほとんどが女性です。いくつになってもキレイでいたいと思う女性の意欲に感心するとともに、『女性を笑顔にさせる』が、この日本を元気にさせる鍵になるのではと思っています。

さて、その中でも年配の女性から決まって受ける質問が、「自分のような年齢でも矯正治療できますか?」ということです。基本的に矯正治療に年齢制限は無いとされています。歯は生きている限り動くからです。ただし、それは誰でも治療可能という意味ではありません。

例えば、歯周病の進行や奥歯の欠損といった場合に、治療が不可能になる可能性があります。歯周病とは歯を支えている歯周組織にかかわる病気のことを言います。歯を支えている歯槽骨にまで病気が波及し、著しい骨の減少が認められると、矯正治療により更に減少してしまう可能性があります。場合によっては、歯の寿命が短くなり、抜けてしまうかもしれません。当然ながら、歯周組織の健康を害してまでやるべきでないのです。

しかし、歯周病の人全てが矯正できないと言うわけではありません。成人の80〜90%は歯周病に罹患していると言われていますので、それでは成人のほとんどが矯正できないことになってしまいます。歯周病でも、病気が歯肉に限局している場合や、骨の減少が軽度のもの、歯周病医により管理がされているものなどは十分に治療が可能になります。

次に、奥歯が欠損している場合のことをご説明致します。前歯を後に動かす場合、奥歯にその反作用がかかります。奥歯がその反作用に耐えてこそ歯列矯正が可能になり、この反作用に抵抗する源のことを固定源と言います。つまり、固定源がないと矯正治療はできないと言うことになります。奥歯が無いのに、出っ歯や受け口を治そうと思っても、それは非常に困難と言うことになります。ただし、最近は、歯の代わりのインプラントを先に植立し、それを固定源として歯を牽引する方法も行われており、治療できる可能性は大きくなってきています。

以上のことをよく検討し、歯を健康に動かせれば、噛み合わせがよくなりますし、歯も磨きやすくなりますから、歯の寿命を延ばすことが可能になります。また、見かけに自信がつき、今後の人生が張りのあるものとなりましょう。

P.S. 1
年齢と共に歯周組織にも衰えがでてきます。この衰えを加速させては、矯正の意味がありません。意味ある矯正治療とするためにも、侵襲をできるだけ少なくさせることが重要になります。そのためには、できれば歯を抜かないことや、補綴(歯に人工物を用いて修復すること)と併用して期間を短くし、侵襲を最小にすることなどの考慮が必要であります。

P.S. 2
一般的に、年齢とともに補綴箇所が増えてくるものですが、例えば補綴箇所が連結されていると歯列矯正ができないことがあります。このような場合、補綴物の連結を切断し、治療後にやり直します。その場合には、矯正治療後に補綴再治療の費用もかかることを念頭に置いて下さい。

P.S. 3
高齢の女性に多い病気として【骨粗鬆症】が知られています。骨の量が減少し、骨折しやすくなる病気です。この病気は骨が形成される速度よりも減少する速度の方が高いことにより起こっています。歯列矯正とは、矯正力をかけた部位に骨の減少と骨の形成を起こさせ、安全に歯を動かす治療法ですから、骨粗鬆症はまさしく、歯の移動に悪影響を及ぼす危険性があります。若い人でも、極端な食事制限によるダイエットを長期間続けると骨粗鬆症になり、矯正治療に悪影響がでる可能性があります。

P.S. 4
顎関節症による肩こりや頭痛を治療する目的で来院される年配の方がおられます。矯正後に肩こりや頭痛が良くなった言われることもありますが、あまり過度の期待はしない方がよいと思います。噛み合わせと顎関節症は関係が無いとされているからです(<<噛み合わせが悪いと顎関節症になるのか?>>や<<顎関節症治療のために矯正治療は必要なのか?>>の項を参照)。

P.S. 5
当院で治療した40歳以上の患者さんの治療例はこちらです。

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